地域密着の落とし穴


 商店街と言えば、地域密着というワードがよく出てくる。確かに、商店街がいちばん得意とするのは地域の需要を満たすことだが、商店街だけが地域に密着するわけではない。スーパーだってドラッグストアだって客の要望は取り入れるし、品揃えも土地に合わせて工夫している。

 むしろ「地域密着」という言葉に甘えてしまうのが商店街の弱点ではないか。顔見知りの楽な客ばかりを相手にし、馴染みでない客をどこかで拒むようになってはいないだろうか。

 常連客は大切にしなくてはならない。しかしそれを増やすためには、常に新しい客を受け入れる姿勢が必要だ。見知らぬ客をいぶかしんだり、冷たく対応するようでは客は増えない。

 商店主が店の中に座って、あるいは店の前に暇そうに立って、売り声を出すでもなく外を通る人をじろじろと見ているのを、散策中によく目にする。あれは店に入りづらいからやめたほうがいい。同じ行動を取るスーパーの店員がいたら気持ち悪いだろう。

 しかしなぜ、あの通行人を見る行動をやめられないのか。あの動きは、待ち合わせをしている人によく似ていると思う。つまり、知り合いが通ったら声をかけようと思って外を注視しているのだろうと、私は解釈している。そしてそれが、馴染み客以外が入りづらい店を自然と作ってしまっているのだ。

 地元で輪を作るのは、その内側の人には悪いことではない。しかし、輪は必ず疎外感を生む。スーパーは誰でも気軽に使える仕組みを実現することで、疎外感を極力薄くしている。一見さんと常連さんとで、入りやすさの差はほとんどない。どちらが新規の客を取り込みやすいか、考えるまでもない。

 特に東京や大阪では、商店街と言えども客は広く想定したほうがいい。住民がすぐ入れ替わり、他県や海外からたくさんの人が訪れる可能性がある街なのだから、それを取り込まない手はない。


(2012/08/30 志歌寿ケイト)



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